ジャズヴォーカリストniko

ジャズヴォーカリストnikoのブログです。My Favorite Thingsであるスタンダード・ジャズのことを主に綴ります。ライブ案内もこちらで!

ヨーロピアンジャズ研究会Vol.1

3/23は心斎橋Rastro845でのライブでした。
今回は「ヨーロピアンジャズ研究会」とタイトルをつけました。
Vol.1なので、しばらく続けます。

アメリカのジャズも好きですが、
時々気がつけばヨーロッパのジャズシンガーを追いかけていることがあります。

何か惹かれるんですよね。
それから以前、台湾で開催されたコーラスグループの世界大会を見た時、
ヨーロッパのグループの桁違いの上手さに圧倒されたことも
興味を持つようになった理由です。

その大会の審査委員を務めていたMichele Weir氏にそのことを伝えてみました。
すると、東・北ヨーロッパには独特の民族音楽や教会の音楽があって
非常に複雑な歌が伝承されている。
幼少期にその歌を地元で練習している人達は
比較的歌がうまい人が多い、とのことでした。
ほーう、なるほど。
そういえば、一時ブルガリアンヴォイスにハマっていました。
不思議な幻想的なハーモニーなんです。
それから、北方民族のサーミにはヨイクという民謡があります。
これが即興的で独特の発声で、
言葉はわからないんだけど、なぜかひきこまれるのです。
これは面白いなあと思い、
しばらくヨーロピアンジャズを追いかけてみることにしました。
ただし、私が取り組むので「歌」「ヴォーカリスト」視点です。
その点はご了承くださいね。

ということで『ヨーロピアンジャズ研究会Vol.1』のセットリストを解説つきであげてみます。
この日は1部がヨーロピアンジャズ、

2部はスタンダードという構成。

1部ではスウェーデンのシンガー、

モニカ・ゼタールンドを取り上げました。
母国語ではセッテルンドという感じで発音するみたいです。
スウェーデン、漢字表記は「瑞典」。
考えたら、アバもカーディガンズスウェーデン出身ですね。


彼女はいくつか録音を残していますが、
ビル・エヴァンスと録音したアルバム

「ワルツ・フォー・デビィ」
代表作なのでその中から選曲しました。

 


『ワルツ・フォー・デビィ』

1964年8月29日
ストックホルムで録音

モニカ・ゼタールンド(vo)
ビル・エヴァンス(pf)
チャック・イスラエル(b)
ラリー・バンカー(ds)

フィリップス・レコード
(オランダの電気メーカー「フィリップス」が創設したレコード・レーベル)

選曲したり、彼女のことを調べたり、
練習しているプロセスで気づいたことや発見がたくさんありました。

それもあわせて書いておきます。

 

それではセットリストです。

1stセット
☆ピアノソロ(4月にリリースされる宮下さんの新アルバムの中から)

1.    I Can’t Give You Anything But Love 
エヴァンスとのアルバムには入っていないのですが、
彼女は以前から歌っていたようです。 

2.   Come Rain or Come Shine

この曲はエヴァンスの美しい演奏が残っています。
おそらくその世界観に沿うような歌唱をモニカはしたんだと思うのですが、
今回は少しビート感を出してミディアム・スイングで演奏しました。
あえてキーも1度下げました。
キーを変えた理由は後で書きます。
ただ、エンディングだけはこの録音と同じにしました。
ご一緒いただいた宮下さんは本当にたくさん音楽を聴いていらして、
楽譜を見ただけで理解してくださるのでありがたいです。
最後に短いブレイクをつくっているのですが、
そこへの持って行き方が絶妙で、胸がきゅんとします。(笑) 

ええ、わたしはマニアですから。

3.    Waltz For Debby
曲順は変えていますが、
モニカの録音イメージに近い感じで演奏すると
ライブでは少し平板になるかなと思い、ところどころ変えています。
この曲は出だしをルバートにしました。
本当にかわいらしく素敵な曲です。

モニカは英語の歌をスウェーデン語で歌ったことで
自分の歌の世界を切り拓きました。
どうもアメリカ進出時に
「黒くない(スイングしないとかジャズっぽくないという意味)」
などと酷評されたそうです。
特にあこがれていたエラ・フィッツジェラルド
「心がこもっていない(英語の意味わかってんのか)」
と言われたのはかなりこたえたようです。
そらそうやろな、それにしてもエラも厳しいな。
と同情するわたし・・・。
アメリカから帰国後半ばキレ気味に
「英語の気持ちなんかわかるか、
わたしはスウェーデン人なんだから母国語で歌うわ」
と言い出してスウェーデン語で歌いだしたという経緯があるようです。
たまたま素晴らしい詩人(ベッペ・ウォルゲス)と
知り合ったことも後押ししたようです。

Take5をスウェーデン語で歌っている録音があるのですが、
かなり衝撃的でした。
個人的にはスウェーデン語とこの曲は合わん・・・と思いましたが。(笑)

Waltz For Debbyは
土岐麻子さんがかわいらしい日本語の歌詞をつけているので
次回はそちらで歌ってみるのもいいかなと考えています。

  
4.    Once Upon A Summertime  ~ Some Other Time 
宮下さんの提案でOnce Upon A Summertime を短いピアノソロで
ヴァースのように弾いていただき、
そこから自然に美しい流れでSome Other Time に入りました。
Once Upon A Summertimeはミシェル・ルグラン(フランス)の作品。
哀愁漂うパリの街角が浮かんできます。
きっと天気は曇りなんだ。
霧雨が降ってるかも。
などと思いつつ、Some Other Timeへ。
いくつかつくっていただいたブレイクに
またも胸きゅんを覚えつつ・・・。
マニアですから。(笑)


5.   Lucky To Be Me
ひきつづきバーンスタインの作品。
モニカはしっとり歌っていますが、
もう少しアップテンポにしました。
それにしても、バーンスタインの曲・・・。
旋律も難しいし、コードも難しいです。
オーケストラならともかく
ピアノと歌というシンプルな構成で
楽譜どおりに弾くとさっぱりしすぎで
何の奥行きもない。
かといって、よくわからないままテンションをつけると
旋律とぶつかって邪魔をする。
ここは宮下さん頼み。(笑)
陰影のあるコードをつけて演奏してくださいました。
これぞヨーロピアン研究会です。
ピアニスト頼みなところが申し訳ないですが・・・。

7.    It Could Happen To You 
これがですね、もう🩷

宮下さんはエヴァンスがこのアルバムの中で弾いているイントロをつけてくださったのです!
とってもキュートなんですよ。

もうあげあげ⤴️⤴️⤴️です。

この曲のスキャットすることもあるのですが、今回は封印。

以上が1stセットの内容でした。
なかなか難曲揃いでした・・・。

それから、モニカはほとんどの曲をBbで歌っていました。
もしかすると音域が狭いのかしら、
それとも何か意図するものがあってのことなのか・・・。
ライブで同じキーが続くと単調になるので、
一部キーを変えて歌いました。

 

2ndは曲のセットと一部のみ説明をあげておきます。

1. Looking For The Sky 星を探して

宮下さんのオリジナル曲です。
ヨーロピアンな空気漂っているので、これは入れなくては。
しかし、これが#6つ、転調につぐ転調・・・。
気を抜くと持って行かれる・・・。
緊張感あふれる美の世界。(笑)
でも、初演の時よりは表現できるようになっている気がします。
 
2.    The Girl From Ipanema    
3. In A Mellowtone
4.  Body And Soul
5.    One Note Samba
6.    My Favorite Things 
7.    LOVE

アンコール     Smile  

 

ヨーロピアンジャズ研究会、次回Vol.2は6月23日日曜日。
もちろん次回も宮下博行さんにご一緒いただきます。

Rastro845での決定している日程をご案内しておきます。
音環境もよくて、皆さんに好評です。

5月25日土曜日
木下孝朗(pf)
niko(vo)

6月23日日曜日
ヨーロピアンジャズ研究会Vol.2
宮下博行(Pf)
niko(vo)

7月27日土曜日
シティポップ×ジャズ
押領司由紀(pf)
niko(vo)

 

大阪市中央区西心斎橋1丁目5-13
大塩アメリカ村ビル4F

jazz845.jp